今年もThreadripperの季節がやってきました。ThreadripperはAMDが誇るHEDT(超高性能デスクトップパソコン)向けのCPUシリーズであり、メインストリームであるRyzen 5/7/9等のシリーズとは一線を画しています。
今年Zen4アーキテクチャを採用したRyzen 7000シリーズは既に登場しましたが、同アーキテクチャのThreadripperはまだ登場していません。
そしてこの度、ついにZen4アーキテクチャを採用したRyzen Threadripper 7000シリーズについての噂情報が集まりましたので、紹介していきたいと思います。
この記事の要点
- Zen4アーキテクチャを採用したAMD Ryzen Threadripper 7000シリーズが2023年の後半頃に登場予定
- 最上位モデルはThreadripper 7995WXになる可能性が考えられ、その性能はPRO 5995WXの130%程度、現行Core i9-13900KSの2倍以上になることが期待される
Ryzen Threadripperシリーズを整理
HEDT向けCPUシリーズ
冒頭でも説明した通り、Ryzen ThreadripperシリーズはRyzen 5/7/9などのメインストリームCPUシリーズとは異なり、超高性能デスクトップパソコンを構築するために開発された特別なシリーズです。HEDT(ハイエンドデスクトップ)向けとも言いますね。
初登場は2017年
AMDのRyzen Threadripperシリーズが初めて登場したのは2017年のこと。Ryzen 7-1800Xなどの第1世代Ryzen CPUが登場した後に、Ryzen Threadripper 1950Xなどとして登場しました。 そしてメインストリームシリーズと同様に、Zenアーキテクチャが採用されました。
基本的に他の世代のものについても、その世代のRyzen CPU(メインストリーム) のアーキテクチャがそのまま使われています。
Threadripper PROは第三世代から
Ryzen Threadripper PROというシリーズもありますが、こちらは第三世代から追加されました。Ryzen Threadripper PRO 3995WX等ですね。
PROシリーズはHEDTというよりもワークステーション向け(どちらかというと業務用みたいな) でありますが、標準シリーズに比べて性能値が高いというわけではなく、PCI-Expressのサポートレーン数がより多かったりメモリのサポートチャンネル数が多かったりなどの差別化が行われています。
ちなみにZen3アーキテクチャのThreadripper(PRO 5995WX等)についてはPROシリーズしか存在せず、HEDT向けのものが登場する見込みはもうありません。
Ryzen Threadripper 7000シリーズの仕様
続いて、お目当てのRyzen Threadripper 7000シリーズの噂されている仕様について紹介したいと思います。
Zen4アーキテクチャ採用
前世代のThreadripperではZen3アーキテクチャが採用されましたので、今回はZen4アーキテクチャが採用されるでしょう。
Zen4アーキテクチャはRyzen 7000シリーズに導入されたもので、TSMCの5nmプロセスが採用されています。Intelの現行CPUがIntel 4アーキテクチャ(7nm相当)であることを考えると、より微細で高品質な半導体であることが伺えます。
コア数が比較的多くなることから消費電力が高くなりがちなHEDT市場では、より微細で電力効率の良い半導体を使うことが必須になってきます。
PCI-Express 5.0対応
前世代ではPCI-Express 4.0までのサポートでしたが、5.0までサポートされるようになる見込みです。
サポートするレーン数については、標準モデル(7995X等?)については最大でx64、そしてPROモデル(PRO 7995WX等?)については最大でx128になる見込みです。
DDR5メモリのサポート
前世代ではDDR4メモリまでしかサポートされていませんでしたが、今回DDR5までサポートされる見込みです。
コードネーム「Storm Peak」
コードネームについてはStorm Peakになる予定です。
ソケット
ソケットについてですが、標準(HEDT)のモデルについてはLGA-4844というものが使われる可能性が高いとのことです。 そしてPRO(WS)モデルについてはLGA-6096が採用される見込みです。
LGA-6096は同じZen4アーキテクチャを採用したサーバー向けのEPYCシリーズCPUにも採用されているものですね。いずれも業務用のプロセッサになりますので、業務用は業務用でソケットを統一するようにするという意向なのでしょうか。
コア数
コア数については具体的な数はまだ議論されていませんが、恐らく最大64コア128スレッドのままかと思います。 Zen4アーキテクチャを採用したRyzen CPU(Ryzen 9 7950X3D等)についても前世代と比較して最大コア数は増えませんでしたので、同様にしてThreadripperのコア数も増えない可能性が高いです。
それに、さすがに128コアになるというのは考えにくいですね。
動作周波数
動作周波数についてもまだ具体的な数値は噂されていませんが、恐らく最大で5.0GHzに達する可能性があります。
以下、前世代の5000シリーズや3000シリーズ、競合するIntel Xeon WシリーズのCPUの仕様とともにまとめてみました。
AMD Ryzen Threadripper 7000 | AMD Ryzen Threadripper 5000 | AMD Ryzen Threadripper 3000 | Intel Xeon W3400/W2400 | |
---|---|---|---|---|
コードネーム | Storm Peak | Chagall | Caste Peak | Sapphire Rapids |
発売日 | 2023年後半? | 2022年第1四半期 | 2019年第4四半期 (HEDT) 2020年第2四半期 (PRO/WS) |
2023年第1四半期 (W3400) 2023年第2四半期 (W2400) |
アーキテクチャ | Zen4 | Zen3 | Zen2 | Golden Cove |
最大コア数 | 64? | 64 | 64 | 56 |
最大CPUクロック | 5.0GHz? | 4.5GHz | 4.3GHz | 4.8GHz |
ソケット | LGA-6096/4844 |
sWRX8 | sTRX4 (HEDT) sWRX8 (PRO/WS) |
LGA-4677 |
メモリ | DDR5 | DDR4-3200 | DDR4-3200 | DDR5-4800 |
メモリチャンネル | 8xDDR5 (WS) 4xDDR5 (HEDT) |
8xDDR4 | 8xDDR4 (WS) 4xDDR4 (HEDT) |
8xDDR5 (W3400) 4xDDR5 (W2400) |
PCIe | 128x PCIe Gen5 (WS) 64x PCIe Gen5 (HEDT) |
128x PCIe Gen4 | 128x PCIe Gen4 (WS) 64x PCIe Gen4 (HEDT) |
112x PCIe Gen5 (W3400) 64x PCIe Gen5 (W2400) |
最大TDP | 300W? | 280W | 280W | 350W |
Ryzen Threadripper 7995WXの性能
まだ最上位モデルがRyzen Threadripper 7995WXになるとは決まっていませんが、そうと仮定して、このモデルの予測性能値を算出してみます。
現行の最上位モデルPRO 5995WXと比較した時に130%程度のスコアをたたき出すことが予想されます。これはRyzen 9などのシリーズにおける伸び率等も加味したときの値ですね。
そうなると現行Core i9の最上位モデルの2倍以上の性能ということになり、その偏差値(CPU全体)は160にまで登ります。 160なんて値見たことないですね笑
Ryzen Threadripper 7000シリーズの登場時期
登場時期についてですが、2023年の秋ごろになる見込みです。
参考記事:https://videocardz.com/newz/amd-ryzen-threadripper-7000-storm-peak-gets-preliminary-cpu-z-support
https://www.tomshardware.com/news/ryzen-threadripper-7000-storm-peak-cpu-surfaces-with-64-zen-4-cores
https://www.tomshardware.com/news/amds-threadripper-7000-cpus-tr5-platform-will-arrive-later-this-year