今年もグラフィックボードの季節がやってきましたね! Nvidiaからは新しくRTX 4000シリーズのGPUが、そしてIntelからは「ARC A750/A770」が登場する予定です。ん?AMDじゃなくてIntel? そうなんです。ついにIntelからグラボが登場するとのことで、これがARCシリーズの最初の外付けGPUになります。 そんな「A750/A770」ですが、一体どれくらいの性能でどれくらいの価格なのでしょうか。 この記事では徹底解説していきます。
Intel ARC A750/A770のスペックと立ち位置
Intelと外付けグラフィックボード
Intelはこれまでに主にCPU事業に力を入れてきました。そしてCPUに内蔵されているGPUなどの製作についてもここ数年で特に力を入れてきましたが、AMDやNvidiaのように外付けのグラフィックボードについてはあまり扱ってきませんでした。「あまり」というのはつまり、少しは扱ってきたわけです。それもかなりさかのぼること24年前、「Intel 740」という名前で登場したグラフィックボードですね。 正直私の考えとしては、Intelは未来を見据えて、小型コンピュータが圧倒的に増えていくと予想し、そしたら外付けグラフィックボードじゃなくてCPUに内蔵されているGPUについて力を入れる方が良いのではないかという考えのもと外付けGPUには力を入れてこなかったのじゃないかと思います。ただこの度、ついに参入しました。それにはきっと何か戦略があるのでしょう。
ARC A750 / A770のスペック
Nvidiaについては過去の製品がたくさんあるので、新製品の仕様とか性能の想像がつきやすいですが、Intelは過去製品がないので性能の予想がつかないですね。。 というわけで、一旦その仕様についてIntel公式ホームページで確認してみましょう。
GPU | Intel Arc A770 | Intel Arc A750 | Nvidia GeForce RTX 3060 |
---|---|---|---|
半導体製造プロセス | TSMC 6nm | TSMC 6nm | Samsung 8nm |
動作周波数 | 2,100 MHz | 2,050 MHz | 1,780 MHz |
接続 | PCI-e 4.0 | PCI-e 4.0 | PCI-e 4.0 |
消費電力目安 | 225W | 225W | 170W |
補助電源 | 8pin + 6pin | 8pin + 6pin | 8pin |
VRAM | GDDR6 8GB / 16GB | GDDR6 8GB | GDDR6 12GB |
価格 | 5万円~ | 4.2万円~ | 5万円~ |
以上のようにざっとまとめてみました。製造プロセスはTSMCの6nmとなっています。7nmよりも20%くらい密度が向上したものです。RTX 3060と比較すると効率の良い半導体となっていますが、最近発表されたRTX 4000シリーズの半導体「TSMC 5nm」に比べると劣っています。
続いて動作周波数ですが、これはかなり高めに設定されていますね。6nmプロセスでここまでの周波数を実現できるのはすごいです。RTX 3060は最大で1,780MHzですから、この項目についてはIntel Arc 750おおよび770が余裕をもってリードしているといえます。
ただ、その分消費電力が大きくなっています。 そしてメモリについては上のとおり、A770については16GBのモデルも存在します。 最後にまた振り返りますが、価格についてはA750が一番安くて、A770とRTX 3060が同じくらいです。
A750 / A770の立ち位置
後ほど性能について言及しますが、上の仕様より、このGPU達の立ち位置について何となくわかっていただけたかと思います。A750「50」という十の位の数字はどうやらNvidiaの型番の十の位とリンクしているようです。つまりA750はエントリーモデルで、安い代わりにそこまで性能が高くないといった感じ。そしてA770はアッパーミドルレンジクラスで、世の中のほとんどのゲームを、そこまで設定を上げすぎなければ快適にプレイすることができるくらいの性能です。 イメージ的には、フルHD解像度であればどんなゲームでもかなり設定を上げてでも快適にプレイできるくらいです。4K解像度でもある程度快適にプレイできますが、設定を上げすぎるとボロが出てくるくらいですかね。
言い方を変えれば、恐らく世の中で一番必要とされているくらいの性能であり、「ちょうど良い」です。そして価格についても高すぎず、ちょうど良いといえるでしょう。
Intel ARC A750 / A770の性能
立ち位置についてざっと説明しましたが、言葉で説明してもわかりにくいですよね。そこで今度はこれらの性能についてグラフを用いて説明します。
まずはIntelが公開しているベンチマーク結果を紹介します。

まずはIntel ARC A770とNvidia GeForce RTX 3060の比較です。様々なゲームにおいて比較していますが、それぞれ1440p解像度設定で、品質も高設定にされています。そしてRTX 3060のスコアを1とした時の相対的なパフォーマンス値について言及されています。なお、価格に対するパフォーマンスですので、性能が高くても高価であればスコアが下がってしまう仕様です。
このゲーム集の中にはCyberpunk 2077やDestiny 2などのかなり有名なゲームが含まれていますが、ほぼすべてのゲームにおいてA770の方が勝っています。中には二倍近くのスコアをたたき出しているゲームもあり、状況次第ではかなりの性能を発揮できるGPUだということが見て取れるでしょう。 A770とRTX 3060はほとんど同じ価格なのにここまでの差がついているということはA770の方が圧倒的にコスパが高いということになりますね。

続いてA750とRTX 3060の比較です。こちらも同じゲームで比較されていますが、またしてもA750が非常に優秀です。A750の方がRTX 3060よりも安くなっていますが、このスコアが高いことから、安いのにRTX 3060に負けないくらいの性能を保有しているということがわかります。やはりコスパがとても良いですね。このようなグラフを用いてプレゼンをしていることから、Intelは絶対的なパフォーマンスというよりもより顧客に寄り添った「コストパフォーマンス」を意識していることがわかります。GPUのレベル帯的にも、最も必要とされるであろう性能となっているので顧客を意識している感じがします。もちろんNvidiaのGPUについても顧客のことが意識されていますが、RTX 3090などのフラッグシップモデルはNvidiaの腕試し的な側面が強く、価格もかなり高いし性能的な需要もそこまでないし、顧客を一番に考えた製品とは言えません。 IntelのGPUにはそのような存在がなく、とにかく需要の高いGPUをよりコスパ良くしたみたいな感じです。
続いてIntelが公式に発表しているものではなく皆さんおなじみのGeekbench v5に投稿された結果を紹介します。こちらではバルカンAPIという種類の計測になっています。
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全体的に非常に僅差ですね。こちらの結果ではA770よりもRTX 3060の方が若干高くなっています。まぁバルカンAPIで計測したときの話になりますが、状況次第でRTX 3060の方が優秀ということになるということですね。 そして隣に、AMDのRadeon RX 6700 XTの結果も載せました。こちらに比べたらA770は優秀です。ただ、やはり全体的に僅差ですね。ちなみにRadeon RX 6000シリーズはAMDの最新のGPUシリーズで、以下の記事で詳しく解説しています。
【性能比較】Nvidia RTX 3000 vs AMD RX 6000【王者対決】
過去にはRTX 3000シリーズと比較したこんな記事も作ったもんですね。懐かしいです。このサイト「BableTech」が開設された2019年の夏ごろにはまだNvidiaではRTX 2000シリーズ、そしてAMDではRX 5000シリーズについて騒がれ始めたかなって感じだったと思います。
そしてAMDはさらに今、2022年内に発売されるであろうRX 7000シリーズに手をかけているところです。
【RX 7900XT】Radeon RDNA3 GPUの最新情報【Navi 31】
また、NvidiaについてはちょうどRTX 4000シリーズが発表されたところで、IntelのA770 / A750と共に10月12日にRTX 4090が登場する予定です。
【3090の4倍】RTX 4090のすべて【性能・価格・電力】
Intel ARC A750 / A770の価格・総評
先ほど紹介した通り、価格については以下の通りになっています。
GPU | Intel Arc A770 | Intel Arc A750 | Nvidia GeForce RTX 3060 |
---|---|---|---|
価格 | 5万円~ | 4.2万円~ | 5万円~ |
A770とRTX 3060は同じくらいの価格で、A750だけ1万円ほど安くなっています。状況次第ではA770はRTX 3060に負けてしまうわけですが、ほとんどのゲームでより優秀なスコアをたたき出すことがわかりました。 ただ、AMDもNvidiaも現在新しい世代に移行しようとしている中(Nvidiaに関してはもうすでに次の世代のGPUを発表した) Intelはまだ今の世代の中で戦おうとしているということになります。 イメージ的には、Intelは1年前のGPUと競争して勝っててそれを優秀といっている感じですね。1年なんて大したことないとか思われるかもしれませんが、こういったテクノロジーの世界では1年は割と長いです。このサイト「BableTech」に記事があふれているのも、この分野では1年間で様々なことが起きるということを示唆しているでしょう。
そして実際に、以下の記事で紹介している通りNvidiaのRTXシリーズではRTX 3090とRTX 4090の間で最大で4倍以上もの差がついています。
【3090の4倍】RTX 4090のすべて【性能・価格・電力】
そう考えるとIntel Arc A750 / A770のテクノロジーは最先端というわけでもなさそうですね。ただ、RTX 4000シリーズのミドルレンジモデルがまだ発表されていない現在、ミドルレンジ市場の中ではこのArc A750 / A770は十分に戦える製品となっているといえるでしょう。
実際にオリジナルファンモデルなどが登場するとしてそれがAmazon等で何円で販売されるかはあまり想像がつかないですが、Nvidiaよりもコスパが高くてちょうど良いGPUになることを願っています。そうなったら私も購入する可能性が高いです。 ちなみに発売についてはRTX 4090と同じ2022年10月12日となっています。