先日、AppleからiPad Pro 2020年モデルが発売されました。そしてもうすでにレビューしている人がたくさんいるわけですが、そんな中で疑問になるのは処理装置についてです。
新型のiPad Proには「A12Z」という名前のチップが搭載されましたが、一体A12Zとはどのような処理装置なのでしょうか。また、A12Xとの違いは何なのでしょうか。この度、その仕様がほとんど明らかになりましたので紹介します。
この記事を2文で説明すると
- iPad Pro 2020年モデルに搭載されているA12ZチップはA12Xチップと比べた時、CPU性能は同じでGPU性能が10%ほど高い
- 両者の違いはGPUのコア数だけである
「A13X」の予定だった
そもそもiPad Proというのはこれまでに、同年代に登場したiPhone用のチップをベースに、パフォーマンスを向上させた「A~X」という名前のチップが採用されてきました。
例えば2017年のiPad Proには、iPhone 7シリーズの「A10」チップをベースにした「A10X」が搭載され、2018年のiPad ProにはiPhone Xs等の「A12」チップをベースにした「A12X」が搭載されました。
そして2019年の後半にA13チップを搭載したiPhone 11シリーズが発売されましたので、次のiPad Proには「A13X」チップが搭載されるだろうと誰もが予想していました。
しかし結局、またしてもA12チップをベースにした「A12Z」となりました。しかしアルファベットが「X」から「Z」に替わっているので何かしら進化したのだと考えられます。ではどのように進化したのでしょうか?
A12XとA12Zの違い
それではA12XとA12Zはどう違うのでしょうか。ここには多大なオチがあるのですが、その種明かしをする前に一旦ベンチマークの結果を見ることにしましょう。
CPU性能
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これはGeekbench v5のマルチコアスコアを比較したものになりますが、iPhone 11シリーズの「A12」チップの二倍近くの性能が出ているもののA12Xチップと比べるとほとんど性能差はありません。
比較用に最近登場したMacBook Air 2020年モデルの最小構成の結果も投入しましたが、A12シリーズの圧勝ですね。そのため、A12XからA12Zにおいてはほとんど性能は向上していないものの、もともと十分すぎる性能があると言えます。
GPU性能
続いてはCPU性能ではなく、グラフィックの処理を行う「GPU」の性能です。
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GPU性能についてもA12Xチップ等はA12の倍程度の性能を発揮していますが、こちらに関してはA12ZチップはA12Xチップよりも高くなっています。
実に10%以上の性能アップです。つまり、CPU性能はほとんど向上していないけどGPU性能はそこそこ改善されたということですね。
コアの違い
最新の情報によると、A12XチップとA12Zチップの違いは「コアの構成にある」とのことです。
それも、CPUコアには違いは無く、GPUコアにのみ違いが見られているそうです。
2018年モデルのiPad Proには見かけ上、7つのGPUコアがありましたが、今回の2020年モデルには8つのGPUコアが確認されました。両者は同じアーキテクチャを利用していますが、単純にコア数が増えたので結果的にGPU性能が10%以上向上したといった感じです。
実は全く同じチップ説
ここで噂されているのが「実は全く同じチップ説」です。
本当は2020年モデルにA13Xチップなどを導入しないということをもともと決めていて、でも何かしらのアップデートは必要だから最初からA12XチップのGPUコアのうち1つを無効にしようという作戦です。
つまり最初からA12Xチップには8つのGPUコアが搭載されていたのですが、ソフトウェア的にそのうちの1つを無効にし、2020年モデルに搭載するA12Zチップにて全部有効にして見かけ上GPUコアが増えたように感じさせる作戦です。
これによって新たにA13Xなどのチップを開発する必要がなくなり、開発コストを抑えることができました。つまり、AppleはiPad Pro 2020年モデルにそこまで力を入れていなかったということです。
A13Xチップはパス
実は2020年の後半か、あるいは2021年の前半にまた新型のiPad Proが登場すると言われています。おそらくそれが登場する前に新型のiPhone 12が登場し、A14チップが搭載されると考えられていますが、その時もまたiPad ProにはA14Xなどのチップを搭載せず、A13Xチップ等を搭載するのではないかとも考えられます。
しかし噂によると、次のiPad Proには「A14X」チップが搭載されるとのことです。つまりA13Xチップはパスするということになります。
様々な理由が考えられますが、次のiPad Proで5Gが有効になるということを考えると、5GをサポートしなかったiPhone 11シリーズのA13チップをベースにしたチップを利用するのは理にかなっていないのでしょう。
そしてほぼ確実にiPhone 12では5Gがサポートされますので、そのチップをベースにしたA14Xチップでも5Gが利用できるようになるのでしょう。そしてiPad Proに搭載されるのです。