2022年、今年もCPU性能戦争の時期がやってきました。9月末にAMDからRyzen 7000シリーズプロセッサが発売され、トップモデルとして「Ryzen 9-7950X」が登場しました。そしてIntelもそれを追いかけるようにして第13世代Coreiシリーズプロセッサを発表し、トップモデルとして「Core i9-13900K」が登場する予定です。
同時期に発売されることになるこの二者ですが、気になるのはその性能差および価格差でしょう。この記事では、ベンチマーク結果を用いて、二者の特徴やコストパフォーマンスの差について述べていきます。
また、このトップモデル同士の比較だけでなく、同じ世代の他のモデルの性能についても言及します。
仕様の比較
まず最初に、両者の仕様についておさらいしたいと思います。もうすでに知ってるよって人は下にある「性能を比較」の見出しまでお願いします。
アーキテクチャの比較
Intel 第13世代CPUに導入されたアーキテクチャ「Raptor Lake」では「Intel 7」と呼ばれる第三世代の10nmプロセス半導体が用いられています。実に三世代目にもなる10nmプロセスですが、二世代に比べて10~15%程度電力効率が向上していて、その性能としてはTSMCなどの7nmと同程度といっても過言ではないです。 しかし一方でRyzen 7000シリーズに導入されているZen4アーキテクチャではTSMCの5nmプロセス半導体が用いられています。これはiPhone用の処理装置などにも採用されているもので、非常に電力効率が良く、回路の小型化にもかなり貢献しています。さすがにIntel 7アーキテクチャはTSMCの5nmプロセスに及ばないようで、Intel 7の次の「Intel 4」プロセス(7nmプロセス詳しくはこちらの記事:【2nmも!?】Intelの2025年までのロードマップを紹介!【10nm~2nm】)
はCPUに導入されずに、次の世代のCPUはTSMCの5nmプロセスが採用されるかもしれないと噂されているようです。
ということで、回路の精密さ等に関してはRyzen CPUの方が優位に立っていると考えられます。ただ、回路の細さ=性能値というわけではないので、まだどちらの方が優秀かはわかりません。
そしてIntel Raptor Lakeアーキテクチャでは第十二世代Alder Lakeと同様に、消費電力コアと高性能コアの二種類を搭載しているモデルがあります。この要素はRyzenシリーズにはないものですね。そして12世代と同様にDDR5メモリ、PCI-Express 5.0等をサポートしています。PCI-Express 5.0は今のところ、活躍する場所は特になさそうですが、、、
DDR5メモリについてもまだほとんど普及していない現状ですね。普及にはあと一年間くらいかかりそうです。
仕様の比較
アーキテクチャについてざっとおさらいしたところで続いて、CPUについての仕様を表形式でざっと紹介します。
名前 | コア(大+小)/スレッド | 大コアベース周波数/最大周波数 | 小コアベース周波数/最大周波数 | PBP / MTP | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
Core i9-13900K | 24(8+16) / 32 | 3.0 / 5.8 | 2.2 / 4.3 | 125W / 253W | $589 |
Ryzen 9-7950X | 16 / 32 | 4.5 / 5.7 | – | 170W / 230W | $699 |
Core i9-12900K | 16(8+8) / 24 | 3.2 / 5.2 | 2.4 / 3.9 | 125W / 241W | $589 |
Ryzen 9-7900X | 12 / 24 | 4.7 / 5.6 | – | 170W / 230W | $549 |
Core i7-13700K | 16(8+8) / 24 | 3.4 / 5.4 | 2.5 / 4.2 | 125W / 253W | $409 |
Ryzen 7-7700X | 8 / 16 | 4.5 / 5.4 | – | 105W / 142W | $399 |
Core i5-13600K | 14(6+8) / 20 | 3.5 / 5.1 | 2.6 / 3.9 | 125W / 181W | $319 |
このようになっています。第13世代のものと、一部第12世代のCore i9も参考用に載せました。そしてRyzenシリーズも盛り込まれています。
コア数を見てみると、全体的に総コア数はIntelの方が多くなっていますが、省電力コア(低性能、低電力)も含まれていることを考えると、どっこいどっこいといった感じでしょうか。高性能コアはRyzenの方が全体的に多く、なんだか強そうなイメージがありますね。 ちなみに省電力コア(小コア)はハイパースレッディングテクノロジーが採用されておらず、そのスレッド数はコア数と等しくなっています。
動作周波数についてですが、Intel Core i9-13900Kが一番高く、最高時で5.8 GHzとなっています。第9世代Core i9-9900Kで初めて5GHzに到達して話題になりましたが、いつの間にか6GHz近くになっていますね。ただ、RyzenもIntelより細かい5nmプロセス半導体を用いているのに5.7GHzに到達していて、非常に素晴らしいものになっています。
そしてIntelの省電力コアについてですが、こちらも最大4.3GHzと、省電力コアにしてはかなり高めに設定されています。
続いて消費電力についてですが、いつもは「TDP」(熱設計電力)という表現の仕方をしているのですが、今回は「PBP」「MTP」という言葉が登場しています。PBPというのは「Processor Base Power」の略で、基本的な消費電力の参考値です。そしてMTPというのは「Maximum Turbo Power」の略で、ブーストされて一時的に達する最大の消費電力値です。 数年前まではCPUのTDPは100Wをあまり超えないイメージだったのですが、今ではi5なんかでもK付きモデルでは普通に100Wを超えていますね。いくら回路が進化しているとはいえ、やはりトランジスタの数がどんどん増えていっているので全体として消費電力は大きくなっています。これだけは食い止められなさそうです。また、回路の微細化によって単純に導線の長さが抑えられるため消費電力が小さくなるというメリットはありますが、実は回路の幅が小さくなると電子が通る断面積が小さくなり、抵抗率の公式によりその抵抗値は大きくなるため発熱量・電力が大きくなってしまいます。そのため、回路の微細化=消費電力の低下が必ずしも成り立つとは限らないです。
PBPに関しては全体的にRyzenの方が高くなっています。これはおそらく、Intelの方に省電力コアがあることが関係しているでしょう。ですがMTPについてはIntelの方が全体的に高くなっています。これはIntelの方が全体的に動作周波数が高かったりすることが原因でしょうか。
価格については、最上位モデルに関してはIntelの方が圧倒的に安くなっています。ただ、Ryzen 9-7900Xに関してはだいぶ価格が抑えられていて、一応Core i9-13900Kよりは安くなっています。 この後性能値と一緒に確認していきましょう。
性能の比較
仕様についておさらいしたところで、これらの性能を比較していきます。今回はBlenderベンチマークの情報になります。
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このようになっています。価格のとおり、Ryzen 9-7950Xが一番高い数値をたたき出しています。それもわずかな差といった感じではなく、結構とびぬけていますね。そしてRyzen 9-7900Xは思ったより性能が低く、Core i7-13700Kよりも少し良い程度となっています。Core i9-13900Kとそこまで大きな価格の差がないことを考えると、Core i9-13900Kの方がコスパが高いといえます。また、Ryzen 7に関してはさらに性能がガタ下がりしていて、もはやRyzen 9-7950Xの半分くらいにとどまっています。Core i5の方が安いのに性能が高く、コスパが良いです。Ryzenの方がモデルによって激しく性能の差が出ていますね。対するIntelの方は安定しています。
性能的にはRyzen 9-7950Xがトップですが、価格や消費電力などの実用性を考えると、Core i9の方が優秀であるといえます。また、エントリーモデルについても、これまで通りCore i5が最強ということですね。非常にコスパが良く、ちょうど良い立ち位置となっています。
ちょうど良い立ち位置といえば、最近Intelから発表されたIntel初の外付けグラフィックボード「Intel Arc A770 / 750」についても、グラフィックボード市場の中でちょうど良い立ち位置となっています。ぜひ以下の記事で確認くださいませ。
【すべてがちょうど良い】ARC A750/A770がついに登場【Intelのグラボ】
Intelはあらゆる分野において、市場のニーズをしっかり考えているちょうど良い製品を開発してくれるイメージがありますね。Intelの次の世代のCPU「Metor Lake」についても要チェックです!